国立西洋美術館で開催中の「
プラド美術館展~ベラスケスと絵画の栄光」に行ってきました。去年は興味をそそられる美術展が少なく、美術館に足を運ぶことは少なかった。今年初の本格的美術展に大いに感動し、満足しました。

当初はこの展覧会に行く気はなかったんですが、ちょっとした幸運に恵まれて俄然興味が湧いてきました。
というのは、

あの中野京子さん繋がりだったんです。先日ここにアップした「怖い絵」「名画の謎」シリーズの延長で、中野さんの本を引き続き何冊か読んでいたんです。たまたま昔から興味のあった「ハプスブルク家」のことを美術品と関連付けた中野さんの「ハプスブルク家12の物語」を読んでこれまたえらく感動したばかりだったんです。今回王室の肖像画も出品されているということで早速出かけました。
スイスの一豪族から大出世、列強のパワーバランスによって偶然ころがりこんだ神聖ローマ帝国の地位をバネに、以後、約六五〇年(13世紀から20世紀初頭)にわたり王朝として長命を保ったハプスブルク家。
『狩猟服姿のフェリペ4世』に描かれているフェリペ4世(1605-1665)はスペイン・ハプスブルク家の一員でスペイン国王です。政治に関してはまったく意欲や能力はなかったんですが、美術品に対する審美眼だけはセンスが良く、王室のコレクションを充実させました。まだ駆け出しの若いベラスケス(1599-1660)の実力を認め、宮廷画家として厚遇しました。

ハプスブルク家の人間に極めて特徴的な「突き出た下顎」「分厚い下唇」の顔立ちが見てとれます。この顔の特徴が代々続いていきました。
パンフレットの表紙にもなっている馬上の王子『王太子バルタサール・カルロス騎馬『』。かわいいけどちょっと気難しい顔をしている。フェリペ4世の長男として生まれた王子だったんですが、結婚前の16歳で急死してしまいます。ところが父親のフェリペ4世は王妃がなくなるとこの王子の婚約者だったマリアナと結婚しちゃうんです。もっと言えばこの夫婦は叔父と姪の関係です。この王室ではこんなことが普通だったんです。
フェリペ4世の跡継ぎのカルロス2世の肖像画も『甲冑姿のカルロス2世』として父親の近くに飾られています。甲冑姿で勇ましく描かれていますが、これは相当粉飾されていたらしく、「病弱で知能も低く精神を病んでいた」ということです。結婚はしましたが子供に恵まれず、39歳で息をひきとりました。
もうひとつ肖像画で素晴らしかったのは『王女イサベル・クララ・エウヘニアとマグダレーナ・ルイス』。王女の豪華な衣装を描き上げた技術もすごいですね。この王女はフェリぺ4世の父親のフェリペ3世の腹違いの姉です。ですからフェリペ4世の叔母様になります。ほんとハプスブルク家の家系図を追っていると頭がこんがらがってくる(笑)。
詳しくは省きますが、ハプスブルク家は血族結婚が極めて多く、悲しいかなそのために死産や先天性の病気、乳児死亡率が高く、やがてスペイン・ハプススブルク家は1700年前出のカルロス2世の死去により終わりを迎えることになったんです。もうひとつのオーストリア・ハプスブルク家は1918年、第一次世界大戦の終了とともに最後の皇帝カール1世が退位して長いハプスブルク家の歴史を閉じました。
少し話が横道にそれましたが、展示品の中でも肖像画は格別ですね。どちらかといえば無表情なんですが、眼差しが彼らの心の内を表しているように見えました。肖像画の前に立つと何故か見る側の心が落ち着きます。他にはティツィアーノ・ヴェチェッリオの『音楽にくつろぐヴィーナス』もよかったですよ。ティツィアーノ・ヴェチェッリオをひとつ見たかったのが実現した。今回作品の予備知識があったのでいつもと違った見方が出来たし、思い入れが一段と強くなりました。平日の午前中でしたが少し混んでました。
そして上野のお山から鉄っちゃんを少し。

アメ横が見えます。


ハプスブルク家に関する詳細は中野京子さんの「ハプスブルク家12の物語」を参考にさせて頂きました。
E-M5 Mark II、M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8
スポンサーサイト