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ハプスブルク展~600年にわたる帝国コレクションの歴史

今日は美術展のハシゴです。まずは「国立西洋美術館」で開催中の「ハプスブルク展」です。このあと「鏑木清方 幻の≪築地明石町≫特別公開」に東京国立近代美術館へ。

「ハプスブルク家」はもとはといえば10世紀末頃スイス北東部にあらわれたの弱小の豪族であった。1273年ルドルフ1世が神聖ローマ皇帝に選ばれて以来勢力を拡大し、15世紀から神聖ローマ皇帝位を事実上独占。政略結婚によってスペインも勢力下におさめた。20世紀初頭の第一次世界大戦後、オーストリア皇帝カール1世がスイスに亡命し、約650年間も続いたヨーロッパ史上最大の王朝は歴史の幕を閉じた。

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(左:上から マリア・テレジア マクシミリアン1世 ルドルフ2世 フランツ・ヨーゼフ1世 中央:上から マルガリータ マリー・アントワネット 右:上から エリザベト 馬上槍試合用甲冑セット フェリペ4世)

ウィーン美術史美術館の協力のもと、世界屈指と言われるハプスブルク家のコレクションから、絵画、版画、工芸品、タペストリー、武具など約100点を展示されています。ハプスブルク家の8人の王族にスポットを当て、関連作品が紹介されています。館内は身動きが出来ないほどではなかったですが、けっこう混んでますね。


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個人的には以前中野京子さんの「ハプスブルク家12の物語」を読んでいたので今回参考になりました。とにかくややこしいです、なんせ650年も続いた王朝ですから家系図も複雑で長大ですし、同じような名前が出て来るんで覚えきれません。今回合わせて「ハプスブルク帝国」も読みました。事前にハプスブルク家の歴史をざ~と把握しておくとより楽しめると思います。

前置きが長くなりました。展示の中で特に印象に残ったのは①スペイン国王フェリペ4世の肖像②青いドレスの王女マルガリータ・テレサの肖像③皇妃マリア・テレジアの肖像④フランス王妃マリー・アントワネットの肖像⑤オーストリア=ハンガリー二重帝国皇帝フランツ・ヨーゼフ1世⑥馬上槍試合用甲冑セット、です。

①のフェリペ4世の顔は忘れません。2018年3月開催された「プラド美術館展~ベラスケスと絵画の栄光」で狩猟服姿の肖像画を見ています。ハプスブルク家の人間に極めて特徴的な「突き出た下顎」「分厚い下唇」の顔立ちが懐かしいです。彼は政治的能力には欠けていましたが、絵画に対する審美眼だけはセンスの良さを発揮して王室のコレクションを充実させました。またまだ駆け出しの若いベラスケスを宮廷画家として厚遇しました。

②の王女マルガリータの幼い姿はかわいらしい(一番上の写真、中央上部の写真の女の子)。この時点で彼女がスペイン王家を継ぐはずだった。しかしその後弟が生まれ、彼女の運命は大きく変わります。15歳で結婚が決まりますが、相手は母の実弟でもあり、父の従妹でもある叔父のオーストリアのレオポルト1世(この関係理解できますか)。血族結婚が理由なのか、産んだ子を次々と亡くし、本人も二十二歳の若さで亡くなってしまう。詳しくは省きますが、ハプスブルク家は血族結婚が極めて多く、そのためなのか死産や先天性の病気、乳児死亡率が高く、やがてスペイン・ハプススブルク家は1700年カルロス2世(マルガリータの弟)の死去により終わりを迎えることになったんです。

①と②ともベラスケスの筆になるところがいい。

③の皇妃マリア・テレジアの肖像も迫るものがありましね。父カール6世が死去、男系が絶え王家断絶かという国家存亡の時、長女のマリア・テレーザが23歳でハプスブルク家を相続。権謀術数外交の渦中で難しい舵取りをし、内政でも天性と言うべき政治的手腕で乗り切った。家庭にあっては16人の子供をもうけ、幼くして亡くなった6人を除き10人を育て上げた。そんな女帝の自信の溢れる表情が見事に描かれている。

④歴史上伝えられているマリア・テレーザの性格が表情によく表れている。本展示作品の中で一番サイズが大きかったかな。これだけが他の作品と雰囲気が違っていた。因みに彼女は前出のマリア・テレジアの末娘です。

⑤事実上ハプスブルク家「最後の皇帝」と言われるフランツ・ヨーゼフ1世(1830~1916)の表情はとても複雑だ。1848年即位以来半世紀におよんでいる。勤勉な皇帝は国事に精励していたが、王家には不幸な出来事が続いた。メキシコ王となった実弟の死。ひとり息子の恋人との自殺。王妃エリザベトが旅先でイタリア人無政府主義者により殺害される。皇帝としての威厳と共に王家の行く末を案ずる憂いに満ちた表情がなんともいえない。彼は年を取り、老いてしまった。

⑥馬上槍試合用甲冑セットを前後からみました。これをどうやって身につけたんだろう?こんなのを被ったら前が見えないじゃあないの。

とまあ見所満載の展覧会を見て表に出ました。光がまぶしい。


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上野公園の紅葉も始まっていた。

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今日も定番のお気に入りの場所からど逆光にめげずパチリ。続きます。

<参考>
 「名画で読み解く ハプスブルク家12の物語」 中野京子 光文社新書  
 「ハプスブルク帝国」 加藤雅彦 河出文庫
 (撮影2019.11.07)

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Author:aki
aki=mikun(鉄道コム)
昔は自転車乗り、今はカメラ片手に神奈川、東京をぶらぶら。
小田急や東海道沿線で電車の写真を撮っています。